緊張がほぐれれば安眠できる
睡眠障害の多くは、寝つきが悪い入眠障害です。夏の熱帯夜に寝苦しいのはもちろんですが、昼間のうちに仕事などでたまった脳や筋肉の疲労、心配事が頭から離れないなどが原因であることがほとんどのようです。
このような人には、腹式呼吸と自律訓練法(自己暗示法によって心身の緊張をほぐす方法) をいっしょに行うことをおすすめします。
呼吸は、意志とは無関係に体の機能を調節・支配している自律神経の働きで行われています。自律神経によってコントロールされている体の機能は、ふつうは意識的に行うことはできません。しかし、呼吸は止めたり深く吸ったりと意識的に行うことができるのです。
息を吸う働きを担っているのは、自律神経の主に交感神経、吐く働きは、主に副交かん感神経というように、役割を分担しています。緊張したりストレスを感じたりすると、交感神経の活動が活発になります。
しかし、そのままでは血圧が必要以上に上がるなど体全体に悪影響が及ぼされます。実際、緊張すると息が速くなります。一方、副交感神経は、体をリラックスさせる働きを持っています。したがって、感情がたかぷっているときなどにゆっくりした深呼吸をしたほうがいいというのは、交感神経を正常にし、副交感神経でリラックスしようとする働きを考えてのことなのです。この働きを利用して、脳や筋肉をリラックスさせれば、不眠が改善していきます。
呼吸には、主に胸を使う胸式呼吸とおなかを使う腹式呼吸がありますが、より高いリラックス効果を得るためには、腹式で呼吸をすることが大切です。
腹式呼吸のやり方は、次のとおりです。布団に入り、両手は下腹部の上に軽く重ねて目を軽く閉じます。この姿勢で腹式吸を行います。
息を吸うときはおなかをふくらませるようにし、吐くときはへこませようにします。おなかの上に置いた両手でその感じを確かめながら行います。
このとき大切なのは、息を吐くときは多少力を込めて長めにし、息を吸うときは自然にすることです。息を吸う、吐くを1回として、1分間に5~6回行います。
ふつう1分間に14~15回の呼吸をしていますから、いつもの半分以下の早さでゆっくりと呼吸を行います。慣れてくれば、1分間に2~3回というごく少ない呼吸ができるようになりますが、最初は無理をしないで1分間に5~6回を目安として行ってください。腹式呼吸をする時間は、2~3分間程度です。腹式呼吸をするときには、吸ったとき肛門を締めるように意識するといっそう効果が高まります。
自律訓練法も安眠につながる
腹式呼吸だけでも疲労回復や不眠解消の効果はありますが、腹式呼吸を行ったあとに自律訓練法を行えば、相乗効果でいっそう眠りに入りやすくなります。
自己暗示といっても難しいものではなく、頭の中で「手足が重くなる」という言葉をゆっくりくり返すだけなのです。手足が重くなるというのは、脳や筋肉の緊張が解け、リラックスした状態になった証拠ですが、実際に手足が重くなったかどうかを気にする必要はありません。
次に「手足が温かくなる」という言葉に替えてみましょう。こうした自己暗示を、腹式呼吸のあとに2~3分間ほど行うと、いつの間にかぐっすりとした眠りに入っているはずです。この腹式呼吸と自律訓練法は、最初はうまくできなくても毎日きちんと続けていくうちに、体が慣れて自然に行えるようになります。リラックスする状態を自分で作れるように、気がついたときに行うようにして身につけましょう。
意外かもしれませんが「満腹は眠れない」仕組みです。就寝前には食べ過ぎないこともとても大切です。
お腹がいっぱいになって眠くなるからといって満腹は睡眠にはつながりません。胃が働いてしまうので熟睡できないのです。