ぐっすり眠ればスリムな体になる
すっかり国民的な認知度を得た「メタポリックシンドローム」。ここでは通称の「メタボ」です。屈辱的な腹囲測定など、「やり過ぎだ! 」という批判も強いようです。
わたしも正確な定義は、把握していません。調べたところでは、内臓脂肪型肥満に高血糖・高血圧・高脂血症(脂質異常) のうち2つ以上が合併した状態を指すようです。
しかし、お腹の出たただの肥満(単純性肥満)でも、世間では「メタボ」と表現されてしまっているようです。肥満は確かに、健康にいいことではありません。「そんなことは百も承知だから食事もカロリー控えめにしているし、週末はジムに行っている」と、メタボ対策の実践を語られるかたもいると思います。
もちろん、こうした生活習慣の改善は大切ですし、効果的です。そして、それにさらに「ぐっすり眠る」が加われば、いうことなしです。
「寝ないと太る」は、徐々に常識となりつつあります。副腎皮質ステロイド( ステロイド)というホルモンがあります。何度か登場しているコルチゾルも、ステロイドの一種です。ステロイドは副腎皮質で作られますが、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、ネフローゼ症候群などの腎臓病の治療薬でもあります。ステロイドの副作用としてはいろいろあるのですが、肥満と精神症状というのは、医学界の常識です。
ステロイド、レプチン、グレリンが肥満を促進?
ステロイドは「元気のホルモン」と称きれることもあり、人間がストレスを感じたときに分泌されるホルモンです。睡眠不足というストレスにさらされていると、1日のステロイドの分泌量が増えてしまいます。
そうすると、ステロイドの副作用が表に現れてしまう、こういう仮説も成り立ちます。睡眠不足と肥満との関係は、ステロイドのほかに、肥満物質のレプチン、グレリンの関与も考えられています。
レプチンは脂肪細胞から分泌されているホルモンのことで、交感神経を活発化させ、エネルギーの燃焼をうながします。つまり、肥満をコントロールするホルモンなのです。
グレリンは、胃で作られるホルモンで、食欲増進作用があります。睡眠時間が短いと、エネルギーを潮境させるレプチンが掘ってしまい、グレリンが増えて食欲が増し、より食べてしまう。結果的に体重が増えるスタンフォード大学のグループが、2004年の「プロス・メディスン」誌に発表した研究によると、8時間睡眠と5時間睡眠のひとを比べたところ、後者のレプチンは15.5 % 減、グレリンは14.9 % 増でした。この結果からすると、睡眠が少ないほうがエネルギーは燃焼きれにくく、しかも食欲が増す、ということになります。
とはいえ、はっきりしたメカニズムが解明されているわけでもなく、今後の解明が待たれる分野です。
不眠と肥満の脳科学はここまで進んでいます
前述したように、肥満によって喉の空気の通り道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群になりやすくなります。睡眠時無呼吸症候群になると、眠れなくてつらいのはもちろんのこと、うつ病や高血圧、糖尿病、さらには心筋梗塞や脳卒中といった生命の危険を伴う病気のリスクが高くなってしまいます。
脳科学からも、不眠と肥満との関係があきらかになってきています。カリフォルニア大学バークレー校のMRIを用いた研究では、睡眠不足の被験者は、食欲や満腹感をコントロールする前頭葉や島皮質といった脳部位の活動が低下していたのです。
さらに同時に、食欲をかき立てることに関連する脳部位は、睡眠不足の被験者で活発になっていました。2013年の「ネイチャー・コミュニケーションズ」誌に発表された内容です。寝不足になると、脳の食欲のスイッチがオンになり、我慢するスイッチはオフになってしまうようです。肥満は万病のもとです。食事、運動だけでなく、良質な睡眠も有力なダイエット手段、と断言できます。
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