嫌な記憶はレム睡眠中にインプットされる

忘れたい記憶が忘れられなくなってしまうということ?

1953年生まれの有名人といえば、サッカーのジーコ元日本代表監督や落合博満・元中日ドラゴンズ監督です。レム睡眠が発見されたのは、同じ1953年。そんなに大昔の話ではありません。

その後、人間は夢をこのレム睡眠中に見ているという事実もわかりました。これを契機に、睡眠が記憶の定着に役立っていることをレム睡眠、ないし夢とからめて説明しようとする研究がブームになりました。

夢を見ているうちに、重要な記憶とそうでない記憶が整理される。なんだか信じてしまいそうな仮説ですね。

最近は、ノンレム睡眠の重要性を示す結果が多くなっています。現在では、言葉による知識の記憶、あるいはスポーツや楽器を覚える、いわゆるからだで覚える記憶には、深い睡眠(ノンレム睡眠、脳波で周波数の遅い波の出る睡眠なので、「徐波睡眠」とも呼ばれます) が重要で、ノンレム徐波睡眠のときに、記憶が整理され固定きれると考えられています。

知識の記憶や手続き記憶をしっかり走者させたいと思っておられるかたは多いでしょうから、このノンレム睡眠の役割は大変重要に思えますよね。ではレム睡眠は記憶に関係はないのでしょうか?ある種類の記憶にはレム睡眠が重要な役割を演じています。それは、「情動記憶」です。しかも、不愉快で「もう思い出すだけでもムカつく」「気持ち悪いなあ」というような記憶です。

レム睡眠の役割

レム睡眠から目覚めさせたひとの多くが夢を見ていたことから、内容のある夢はレム睡眠中に見ると考えられています。科学技術の進歩で、睡眠中の脳活動も研究されていて、レム睡眠中には恐怖など不快な「感情」を司る扁桃体が活性化することがわかっでいます。

逆に「理論」を司る前頭前野の活動は、睡眠中は低下しています。夢の中でアイデアがひらめく現象が起こるのは、前頭前野による理論的な束縛を離れて、扁桃体を中心とする野性的な脳がレム睡眠中に活性化しているからかもしれません。

このレム睡眠が恐ろしい記憶を忘れさせてくれるのか、逆に強めてしまうのかは、議論が分かれています。

ただ、レム睡眠の役割で推測されているのは、覚えた記憶に感情の「タグ」を付けるというモデルです。「面白い授業だった」という感動があれば、知識も忘れにくくなるでしょう。逆にタグ付けに異常があれぼ、イヤな記憶にいつもタグがついていて、トラウマ記憶のようになかなか忘れられないということになります。

レム睡眠と夢については、うつ病やPTSDなど精神疾患との関連性も強いので、治療につながる今後の研究が期待されるところです。