ツボ刺激と足浴

タイプ別不眠症解消法

不眠症は、中国医学では3つのタイプに分けられます。「肝」「心」「腎」それぞれの不調に由来する不眠症です。

  1. 肝タイプ
    もっとも一般的な不眠症です。肝は肝臓という臓器自体を指すとともに、肝臓や消化吸収の働き、自律神経の働きなどから成り立つ複合的な機能を表します。具体的には更年期ののぼせによる不眠症、慢性的に緊張しやすい体質による不眠症があげられます。このタイプの不眠症の特徴は、往々にして心配性だったり考えすぎだったり、神経症気味だったりします。
  2. 心タイプ
    心は心臓という臓器自体を指すとともに、文字どおり心と表現される機能も指します。したがって、このタイプの不眠症は、精神的な心配事や不安を抱えているために起こる、心因性の不眠症といえます。このタイプの不眠症の特徴は、一般的な心配性のレベルを超えたうつ病の傾向がある場合や、ノイローゼの傾向がある場合もあります。また、自律神経のバランスが崩れているために、胃腸の調子が悪くなっている方や、昼眠いのに夜眠れないといった傾向の方もいます。
  3. 腎タイプ
    腎は腎臓という臓器自体を指すとともに、腎臓を含む泌尿器系、成長や生命力などに関係するホルモン系の機能なども指します。腎の機能の不調に由来する不眠症は、簡単にいうと老化が原因の不眠症で、主に高齢者に多くみられます。

肝・心タイプの不眠症にはこめかみ刺激が有効

このタイプの不眠症対策には、次の4つの方法があります。

  1. みけんのシワをもみほぐす
    中国医学では、肝の疲れを診る方法に「みけんのシワ」があります。肝の不眠症が慢性的になっている方は、みけんにシワができていることが多いのです。働きすぎやストレスから肝の機能が興奮すると、やがては疲れ、弱ります。その結果みけんにシワができてくるのです。みけんには肝に深く関係する印堂というツボがありますから、みけんを指先で円を描くように軽くもみほぐすとよいでしょう。
  2. こめかみをもみほぐす
    このタイプの不眠症の方は、寝る前に心身がリラックスできないために眠りに入ることができません。そこで、眠る前にこめかみあたりに触れてみてください。まゆの端からこめかみあたりに指を当て、かむように口を開けたり閉じたりすると、動く筋肉があります。これを側頭筋といい、不眠症の方はこちこちにこっています。この側頭筋を指でもみほぐすと、いつの間にかリラックスして眠りに入ることができます。
  3. 目じりのツボ刺激
    もっとも効果的なのは、太陽というツボを刺激することです。太陽のツボは、まゆの端と目じりの中間の地点を触れるとある骨の、こめかみ側の少しくぽんだところにあります。ここを指で軽く押しもみします。即効的に効果を高める方法として、左右の太陽のツボにカメラや時計などで使うボタン電池をはり付ける方法があります。
  4. 首の後ろのすじをもみほぐす
    耳の下端から後頭部に指を滑らせると、頭蓋骨の下端の骨の出っ張りがあります。そのもっとも出っ張ったところを見つけ、そこから指の横幅2~3本背骨側に下がったところに、触れるとコリコリする2本のすじがあります。ここを外側からよくもみほぐしてください。
  5. 鼻の下をこする
    腎からくる不眠症は主に老人性のものです。年をとると腎が弱るので、ホルモン系が衰え、その中でもとくに副腎の機能が低下します。すると、腎とは反対の働きをする心が緊張し、寝つきが悪かったり、早朝に目覚めるといった症状が現れます。原因不明の不眠を訴える高齢者の方には、鼻の下の指こすりが有効です。

鼻の中心と上唇の中心をつなぐ2本のすじの真ん中にある人中のツボを刺激する方法です。気がついたときに、鼻の下を指で軽くこするだけの簡単な方法です。これだけで全身のホルモンの分泌がよくなり、不眠の予防によい効果をもたらします。

失眠のツボ刺激

不眠を一気に解消するツボに、かかとの「失眠」というツボがあります。このツボはかかとのふくらみのちょうど真ん中にあります。
失眠は腎を刺激し、副交感神経を優位にする作用があるのです。腎を刺激して活性化することができれば、ろ過機能や体の水分の中の余分な水分を押し出す働きが強くなります。その結果、心臓の熱が冷やされてのぼせがおさまり、眠れるようになるのです。さらに、副交感神経が優位の状態になって気持ちをリラックスさせるため、スムーズな睡眠へと誘われます。失眠を用いて治療する場合、はお灸がおすすめです。
毎日のようにこうした治療をしていると、ネフローゼや慢性腎炎の人の尿に出ていたたんばくが、どんどん減少していることからも、いかに失眠のツボが腎に作用しているかがわかるでしょう。家庭で行う場合は、市販されている簡易灸でも効果があります。

すりこぎどで失眠をコリコリと押すのもいいでしょう。中国では、不眠症の改善にはかかと全体をマッサージするとよいといわれ、とくに失眠のあるかかとの真ん中からまっすぐ横にラインを伸ばしたあたりが効果的です。

さらに、このとき同時に行っていただきたいのが足浴です。ポイントは、じゆうぶんに温めてからかかとのざらざらを取ることです。
かかとの荒れは、腎や骨の状態を表しているものです。骨が弱くなって変形性脊椎症(骨がもろくなり骨折する病気)になると必ずかかとが荒れています。不眠症の人もかかとが荒れることが多いのです。

腎は骨や骨髄をつかさどる器官ですから、かかとの荒れはそのまま腎の低下をも意味しています。

イオウ入りの足浴で鎮静作用

このかかとのザラザラを取るには、イオウを入れたお湯での足浴がいちばんです。イオウは薬局で買うことができます。市販されている入浴剤でもかまいませんが、イオウのにおいをつけただけで成分が入っていない場合が多いので、成分表示をよく確かめてください。
これを42~45度のお湯を張った洗面器やバケツに入れ、足をよく温めます。そして、軽石やスポンジでかかと全体をこすってマッサージすると、お灸と同じ効果が期待できます。足が温まってかかとがすべすべになると、自律神経を介して腎や骨によい作用が伝わります。
よく眠れるようになるばかりか、背骨の痛みやゆがみなども改善するのです。失眠への刺激がよく効くのは、寝つきはよくても途中で目が覚めてしまったり、早朝に目が覚めてしまったり、腰が痛くて起きてしまったりといったタイプの不眠です。こうした不眠は、老化で腎や骨が弱ったり、もともと骨や腎が弱かったり、のぼせたりといったことが原因である場合に起こります。

神経質で考えすぎるとか、心配事があって眠れないといった場合は、腎の不眠ではなく、交感神経の緊張によって生じる不眠です。手の中指と薬指の小指側のつけ根をマッサージしたり、指をそらせたりして交感神経の緊張をおさえれば、これらの神経性の不眠に効果があるでしょう。

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