人の健康には絶対欠かせない「睡眠」

睡眠の役割

眠りは、人間や動物に本来備わっている本能的な生理機能です。ずっと起きていようと思っても、結局最後には睡魔に襲われて眠り込んでしまいます。意志の力では完全にコントロールすることはできないのです。

また、よく眠れなかった翌日は1日じゅう疲れが取れず、頭がボーッとしていますが、逆に、ぐっすり眠った翌日は目覚めもさわやかで、心身の疲労が回復するのは、だれでも体験的に知っていることでしょう。

人は人生の約3分の1を睡眠に費やしますが、睡眠は人間が生きていくうえで必要不可欠なものであり、さまざまな役割を担っています。睡眠の役割は主に次のようなものがあげられます。

脳と身体の疲労を回復する

睡眠には、脳や肉体疲労を回復するリフレッシュ効果があります。筋肉疲労など体の疲れは、眠らなくても安静にしていれば回復しますが、脳の疲労は眠らなければ回復できません。脳は体内のあらゆる器官を総合的にコントロールしており、膨大な情報を処理しているため、働き続けるとオーバーヒートしてしまうのです。それを防ぐために、脳は脳自体を休息させ、自ら睡眠を作り出します。

身体活動のリズムを調節する

  • ホルモン分泌リズムの調節
    睡眠は、ホルモン分泌と密接な関係があります。ホルモンの分泌は、睡眠に依存しているものと、概日リズムに依存しているものの2種類があります。コルチゾール(副腎皮質ホルモン) は、眠る眠らないにかかわらず、午前8時ごろに分泌のピークを迎えます。
    一方、睡眠中に分泌が増加するホルモンのなかで、代表的なものが成長ホルモンです。
    脳下垂体から分泌されるこの成長ホルモンは、子どもの発育には欠かせないホルモンで、まさに「寝る子は育つ」 というわけです。
    また、成長ホルモンは大人にとっても大たいしや切なホルモンで、新陳代謝に深く関係しています。一般的に睡眠不足は美容の大敵とされ、肌荒れをもたらすといいますが、熟睡しないと成長ホルモンがじゅうぶんに分泌されないので代謝(新旧の物質の入れ替わり現象) が悪くなり、肌にも悪影響が及ぶというわけです。
    さらに、成長ホルモンは糖や脂肪、たんばく質などの代謝を調整し、身体活動に必どうか要な物質を合成して蓄える作用(同化作用) があるので、眠っている間の疲労回復にも役立ちます。
    このほかにも、眠っている間には、プロラクチンや黄体形成ホルモンなどさまざまなホルモンが分泌されているのです。睡眠は、ホルモン分泌の調節を介して生体のリズムを調節しているのです。
  • 自律神経機能の調節
    自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があり、たがいに相反する働きをしています。昼間、体温が高く活動に適した状態では交感神経が優位になり、心臓の拍動なども高まりますが、睡眠中は、心拍や呼吸などの自律神経系の機能は副交感神経優位の方向へと変わります。

体温を低下させて脳の過熱を防ぐ

睡眠中は、起きているときよりも体温が0.1~0.3度下降します。体温が下がると血液の温度も下がり、それによって脳のオーバーヒートが防げるのではないかといわれています。
また、体温が下がると眠りに入りやすくなります。一般的に、おふろに入ったあとはよく眠れますが、これは、入浴によって上昇した体温が下がっていくときに、睡眠が誘発されるものと考えられています。

免疫機能を高める

風邪などをひいて熱が出ると、うとうととして眠くなることがよくあります。これは、細菌やウィルスに感染して発熱したときには、眠ることによって体を休養させ、免疫機能を高めて細菌やウィルスと戦うためだと考えられています。

睡眠のメカニズム

長時間眠らないでいると自然に眠けが起こってきますが、これは目覚めていると体内に「睡眠物質(睡眠促進物質)」が蓄積してくるからです。
この物質は、眠ると分解されてなくなります。1~2時間でも眠れば眠けが取れるのはそのためです。睡眠物質は、時間に比例してたまっていきます。一時的に仮眠するとその時点で睡眠物質は分解され、目覚めてからまた蓄積されていきます。したがって、夕方に昼寝をすると睡眠物質が不足して寝つきが悪くなるので、昼寝をするのであれば正午ごろに短時間だけ行うとよいでしょう。
人間は体内に生体時計(体内時計) を持っており、昼夜のリズムに合わせて活動と休息のリズムを作っています。この体内時計にしたがって、体温や血圧、心拍などの自律神経機能やホルモン分泌などが、1日1回のリズムで自動的に変化することを概日リズム( サーカディアンリズム) といいます。とくに、体温の概日リズムは睡眠に深く影響しています。
ふつう、人間の体温は午後3~5時ごろがもっとも高く、その後徐々に下がって午前3~5時ごろにもっとも低くなります。
これは、眠っても眠らなくても同じように変化します。たとえば、徹夜をしていていちばん眠くなるのは午前3時ごろですが、だんだん夜が明けてくると体温が上昇して、眠らないのに眠けは薄らいでいきます。ほかの生体機能も、睡眠に関係なく体温と同じような曲線を描いて変動します。毎日、決まった時間に就寝・起床をくり返していると、生体リズムの振幅が大きくなります。振幅が大きいと昼間の活動レベルは高くなり、夜の活動レベルは低くなってよりよい睡眠を得ることができます。

「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」

睡眠の状態や深さは、脳波を調べることによってわかります。脳波は、脳の活動にともなって発生するごく微弱な電気活動で、睡眠の深さに応じて特徴のある波形(パターン) を示します。「浅眠期」(第一段階)、すやすやと眠りにつくその深さは、うとうとして眠りに入る「浅眠期」けいみん「軽眠期」(第二段階)、ぐうぐうと本格的に眠る「中等睡眠期」(第三段階)ぐっすりと深い眠りに入る「深睡眠期」(第四段階) に分かれます。
この第三、第四段階を合わせて「徐波睡眠期」といいます。ところが、浅眠期と同じような脳波のパターンを示しながら、一般の睡眠とは性質の異なるものがあることが判明しました。
この睡眠は急速な眼球活動をともなうのが大きな特徴で、レム睡眠と名づけられました。レム睡眠にはそのほか、次のような特徴があります。

  • 浅眠期と同じような脳波のパターンを示す
  • 体の姿勢を保つ筋肉や重力に抵抗する筋肉の緊張がほとんどなくなる
  • 感覚的な刺激を与えても目覚めにくい
  • レム睡眠時に起こすと約80% の人が夢を見ている
  • テキスト
  • 心拍や呼吸、体温などの自律神経機能が不規則に変化し、男性では勃起が起こる

一方、レム睡眠以外のふつうの睡眠はノンレム睡眠と呼ばれるようになり、睡眠には2種類あるということがわかりました。極端な表現をすれば、ノンレム睡眠は「脳の眠り」、レム睡眠は「身体の眠り」の状態であるといえるでしょう。

ノンレム睡眠+レム睡眠で睡眠の1単位

通常、人間の眠りはごく浅い第一段階のノンレム睡眠からはじまります。そして、第二段階、第三段階、第四段階へと次第に眠りは深くなっていき、次にレム睡眠へと移ります。
ノンレム睡眠とあとに続くレム睡眠をワンセットにして、睡眠の一単位といい、2つの睡眠は交互に出現します。ひと口に眠るといっても、90分の周期で、ノンレム睡眠とレム睡眠を一晩に4~5回くり返しているのです。ところで、睡眠でいちばん重要なのは睡眠時間ではなく、睡眠の質にあります。
つまり、熟睡しているかどうかということです。ノンレム睡眠の第三、第四段階の眠りが熟睡にあたります。
眠っているときに成長ホルモンが分泌されていますが、正確には最初に訪れるノンレム睡眠の第三、第四段階のときに大量に分泌されます。また、脳や身体の疲労回復や免疫能力などを最大限に高めるのも、熟睡しているこのときです。
短時間の睡眠でもこと足りるという人は、熟睡感を得ているからでしょう。ノンレム睡眠は睡眠の前半に深くなり、明け方には次第に浅くなっていきます。一方、レム睡眠は3~4回とくり返すごとにその持続時間は長くなっていきます。

睡眠形態は加齢とともに変化する

睡眠には、老若男女を問わず大きな個人差があり、一般に、年をとるにつれて質・量ともに低下していきます。生まれたばかりの赤ちゃんは、1日中ほとんど眠り続けていて、3~4時間ごとに目覚めます。乳を吸ったりオムツを換えてもらったあとは、またすぐに眠ってしまいます。このように、1日に何度も眠るタイプの睡眠を「多相性睡眠型」といいます。成長するにしたがって覚醒状態が長時間持続するようになります。
さらに、学童期には脳の発達と同時に学校に行くという社会環境の変化もあって、1日1回、夜だけ睡眠をとるようになります。これを「単相性睡眠型」といいます。
年をとると、次第に睡眠の形態が変わってきます。これは、加齢によって脳が萎縮し、眠りを生み出す能力が低下するために起こる現象で、眠りが浅くなったり、夜中や早朝に目が覚めるといったことが多くなります。朝早く目が覚めてしまうため、昼間うとうとと眠けが襲ってきて昼寝をするようになります。いわば、乳幼児のような睡眠に逆戻りする傾向がみられます

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