短時間の昼寝でも血圧が下がる

小刻みな仮眠のもたらす効果

ふつう、人間は、夜に8時間寝ても、起きている間に強い眠けに襲われます。若者なら午後の2時~3時ごろ、高齢者だと正午~1時ごろ、急に眠けを感じるという人が多く、このような睡魔やそれが引き起こす体のだるさ、集中力の欠如などの予防にはごく短時間の睡眠が有効であることは以前からよくいわれてきました。

たとえば、ロサンゼルスの森林消防隊員は、火災が起きるとまとまった睡眠をとれない状態が1週間も2週間も続きます。このようなとき、彼らは15~20分程度の小刻みな睡眠をこまめにとります。さらに、大休止として、一定の間隔をおいて約90分の睡眠をとるようにしています。

これは、人間の睡眠がレム睡眠(浅い眠り) とノンレム睡眠(深い眠り) がワンセットになっており、このセットのくり返しが睡眠の本体であるという科学的根拠に基づいています。

15~20分というのは、寝入りばなに起こるノンレム睡眠の中の最初の軽眠期の長さで、約90分というのは、ノンレム睡眠とそのあとにくるレム睡眠とを合わせた一サイクルの時間になります。

彼ら消防隊員は、効率のよい睡眠をとることで、強い体力と判断力が要求されるハードな仕事を確実にこなしているのです。

こうした仮眠を「昼寝」に置き換え、高齢者の健康や脳の活性化に有効に作用するかどうかをテーマに、研究・調査を重ねてきました。その結果、現段階では昼寝の次のような成果を確認することができました。

  • 昼寝は血圧を下げる効果がある
  • 昼寝は午後の眠けを防止し、気分を改善する効果がある
  • 昼寝は集中力や判断力を高め、「うっかりミス」を防ぐ効果がある

このうち、1の「昼寝と血圧」の関係についてです。

昼寝が高血圧に効果を発揮

週3回以上の昼寝の習慣がある65歳以上の10人に協力を依頼し、2週間定期的に研究室に来所していただき、実験プログラムを実施してもらいました。

朝9時に脳波を測定する電極を装着したり、これから行う課題の練習をしながら体なを馴らし、10時から2時間、実験室でコンピュータゲームのようなことをやってもらいます。たとえば、画面に1けたの数字が次々と出てきて、「3」が出たらチェックボタンを押すというような簡単なものです。

ふつうなら年齢の別なく、だれでも満点がとれますが、注意力が散漫になると見逃すこともあります。このようなテストを8分間行ったあとで、気分や眠けをひとりひとり確認します。この作業を30分に4回くり返し、毎回作業の開始時に脳波を測定します。そして食事のあと、全員が血圧を測定してから、同じ人で日によって昼寝をする日と、昼寝をしないで休憩するだけの日を交互にくり返します。休憩だけの日は、自由にテレビやビデオを観たりして過ごします。昼寝をする日は、入眠後30分たったところで呼びかけて起こします。
ここで、再び全員の血圧を測定し、変化を確認します。血圧の状態が良好なら、2回目のセッションに入ります。以上の内容で、2週間にわたって反復実験しました。

血圧に関しては、収縮期血圧(最大血圧) には顕著な差は認められなかったものの、拡張期血圧(最小血圧)のほうは昼寝のあと、平均8mmHG程度の幅で明らかに下がっています。12~13mmHG下がった人もいました。

効率よい昼寝の習慣をつけて健康な毎日を

実験結果は、昼寝が血圧降下に明らかに効果があることを示しています。被験者の方たちは高齢で血圧も年齢相応に高めですが、とくに高血圧症の人はいませんでした。高血圧症の方を対象に実験をすると、さらに下げ幅は大きくなると推測できます。
昼寝の習慣のある人は、ボケる率が少ないとか健康によいといった統計データを出していますが、「高血圧の改善にも効果があるということも裏付けられたといえるでしょう。

昼寝の効果を確実にするためのポイントは、「寝すぎないこと」です。被験者の方たちは高齢ということで総じて眠りが浅く、そのため昼寝の時間を30分としましたが、若い方なら15分程度でもじゅうぶんです。

それ以上とると熟睡してしまい、目覚めても頭がボーッとして回復に時間がかかります。最悪なのは、50分ぐらいの睡眠です。睡眠サイクルのちょうど中間で起きてしまうことになり、睡眠慣性( このまま眠り続けたいという惰性) が続き、覚醒するのに30~40分かかってしまいます。

中途半端に睡眠を途切れさせるよりも、いっそのこと一サイクルの90分くらい眠ってしまったほうが目覚めはよくなります。

15分といってもそんなに簡単に寝つけないという場合は、寝つくまでの時間をある程度予測して目覚まし時計をセットします。寝つくのに5分かかりそうなら20分後に、10分かかりそうなら25分後にセットします。

昼寝の習慣が今までなかった人ははじめは寝つきも悪いでしょうが、習慣化していくことによってだんだんスムーズに寝つけるようになり、目覚まし時計がなくても起きたい時間に扱きられるようになってきます。健康でメリハリのある毎日のため、昼寝を生活に上手に取り入れましょう。

快眠につながる昼寝はこちら。

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